「ダンボールでできたドローン」――。聞いたとき、正直「え、そんなので飛ぶの?」と思った人も多いはずです。実はこれ、もうとっくに冗談や実験の段階を超えていて、海上自衛隊で標的として実運用が始まっている、れっきとした国産ドローンのこと。しかも価格は約30万円からと、従来の固定翼ドローンと比べると桁違いに安い。なぜ今、ダンボールなのか。その開発の裏側から最新の海外展開、そして防衛テックとしての課題まで、2026年7月時点の最新情報をもとにぎゅっとまとめてみました。
「ダンボールドローン」とは?名前のまんまだけど、侮れない性能
「ダンボールドローン」と呼ばれているのは、名古屋大学発のスタートアップ、AirKamuy(エアカムイ)が開発・販売する固定翼ドローン「AirKamuy 150」のこと。名前の通り、機体の大部分が段ボールでできています。
気になる基本性能はこんな感じ。
- 最高速度は時速120km
- 飛行時間は1.5~2時間
- ペイロード(積める荷物の重さ)は1.5kg
- 組み立て時間はたったの約5分
- 価格は約30万円台から
(出典:2024年国際航空宇宙展での公表情報、Drone.jp 2024年10月)
この価格帯で、これだけの飛行性能を持つ固定翼ドローンは、これまでほとんどありませんでした。しかも、組み立てが5分で終わって、使った後は段ボールだからそのまま処分もできる。一般的なドローンはカーボンや金属でできているので、壊れたら回収して修理するのが前提ですが、この機体は“使い捨て”も視野に入った設計になっています。
いま「段ボール」な理由とは?航空機の常識をあえて外した開発秘話
「なぜわざわざ弱そうな段ボールなのか」――これは多くの人が抱く疑問だと思います。そもそも航空機は「軽くて強い素材」で作るのが鉄則。それをあえて“段ボール”にしたのには、ちゃんとした理由があります。
開発を手がけるAirKamuyの山口CEOによると、出発点は「とにかく安くて、大量に作れて、それでいて長く飛べる機体」を防衛ニーズとして考えたことだったそうです(出典:zeroichi.media 堀江貴文氏との対談)。これを聞いて、同社のエンジニアの皆さんも最初は「そんなの無理だ」と拒否反応を示したとか。でも、その常識をあえて覆したからこそ、従来の常識的なドローンとは一線を画す製品が生まれました。
材料に段ボールを選ぶことで、コストを劇的に下げられるのはもちろん、レーダーに映りにくい(低RCS設計)という特性も生まれています。金属ではないので、レーダー反射がそもそも少ないんですよね。これは軍事的な利用シーンを考えると、かなり大きなアドバンテージです。
最新動向①:海上自衛隊で実運用がすでに始まっている
ダンボールドローンは、もはや未来の話ではありません。2026年1月、小泉進次郎氏が自身のX(旧Twitter)で、海上自衛隊がすでにこのドローンを標的として実際に運用していることを公言しました(出典:小泉進次郎氏のXアカウント 2026年1月30日)。
防衛省が導入する装備品というと、何年もかけて試験を繰り返して……というイメージがありますが、すでに“使えるもの”として現場に入っているというのはかなりインパクトがあります。しかも、ドローンとしての性能だけでなく、価格が安いからこそ「撃ち落とされても痛くない」という運用が現実的にできる。これまでの高価な標的機とはまったく別の発想です。
最新動向②:シンガポール・エアショー2026で海外が熱視線
そして、もう一つ見逃せないのが海外の反応です。2026年2月に開催されたシンガポール・エアショー2026にAirKamuyが出展したところ、これがもう、ものすごい注目を集めたそうなんです(出典:トラフィックニュース 2026年2月)。
海外の軍隊関係者からの問い合わせが殺到したと言われています。ただ、ここで問題になるのが日本の輸出規制。防衛装備移転三原則というルールがあるので、どこにでも売っていいわけではありません。特に、CBRN(化学・生物・放射性物質・核)災害対応など、安全保障に直結するような使い方を想定されると、なおさらです。とはいえ、海外の“生の声”が直接聞けたというのは、今後の事業展開を考える上で大きな一歩だったのは間違いないでしょう。
知っておきたい「脱中国」戦略。ただの段ボールじゃない深い事情
実はダンボールドローン、機体だけじゃなくて、部品調達の戦略にもすごく深い考え方が込められているんです。AirKamuyは、サプライチェーンの「脱中国」を二段階で考えているのが特徴的です。
一つ目は、情報を扱う部品。いわゆる情報端末やネットワーク機器、ドローンの頭脳にあたる部分は、中国資本が入ったものはもちろん、中国製の部品は徹底的に排除しています(出典:実業之日本フォーラム AirKamuy山口CEOインタビュー 2025年11月)。これは情報漏洩のリスクを考えると当然の判断です。
でも、二つ目に、モーターやバッテリーといった比較的汎用的な電動系部品は、状況に応じて柔軟に対応する方針です。まずは国産の需要を育てることが大事で、需要があれば国内メーカーも本気で取り組んでくれる。そのための“最初の一歩”として、無理にすべてを国産にこだわらず、まずは製品を市場に出すことを優先しています。
そして、もし顧客から「徹底的に脱中国したい」という要望があれば、それにも応えられる柔軟な体制を持っているとのこと。この戦略の二段構えは、他の記事ではあまり深掘りされていないポイントなので、しっかり押さえておきたいところです。
防衛テックならではの壁。資金調達と“スピード感”のジレンマ
ここまで聞くと「すごく順調じゃん」と思えますが、実は防衛テックには独特の難しさもあります。
AirKamuyの山口CEOは、日本のVC(ベンチャーキャピタル)は防衛分野への投資をためらいがちだと指摘しています(出典:実業之日本フォーラム 2025年11月)。というのも、VCは投資したお金を数年で回収して、投資家にリターンを返すのが使命。ところが、防衛省の予算は年度ごとで、さらに開発のスピード感も民間とはかなり違います。「ハードはハード」と言われる所以です。
プラスして、防衛産業に対するレピュテーションリスク(風評リスク)もあって、なかなか資金が集まりにくい構造がある。「技術的にはすごく面白いけど、投資には踏み切れない」という声が、実際に投資家サイドからも聞こえてくるそうです。この“お金とスピードのジレンマ”をどう乗り越えていくのかは、この分野のスタートアップ全体の課題でもあります。
そもそも「カミカゼドローン」は作れるの?気になる法的な壁
ウクライナ戦争の映像などで「自爆型ドローン」を思い浮かべた人もいるかもしれません。ダンボールドローンも、価格が安いので「もしかして自爆型も作れるの?」と気になる人が多いです。
実際にAirKamuyもその可能性は技術的にはゼロではないとしつつも、現実的なハードルがあると語っています。日本には武器等製造法という法律があって、武器を製造するには国の許可が要るんですよね。これをクリアするのは簡単な話じゃない。現時点で「カミカゼ仕様」の開発が具体的に進んでいるという公式発表はありません。
ユーザーから見えてきた「不安の声」と「期待の声」
では実際、ダンボールドローンに対して現場やネットの反応はどうなのか。X(旧Twitter)やニュースサイトのコメントなどを見てみると、いくつか特徴的な声が集まっていました(2026年7月時点での調査結果)。
ポジティブな意見としては、「価格30万円でこの性能は革新的だ」という驚きの声。防衛専門家の中には「ウクライナ戦争の現実を考えると、使い捨てられるドローンの重要性がよくわかる」といった冷静な評価もありました。発想そのものを面白がる声も多く、技術に詳しい層からの注目度の高さがうかがえます。
一方で、やっぱり気になるのが耐久性。「段ボールって雨に濡れたらどうなるの?」「風が強い日は飛ばせるの?」といった、実運用に直結する不安の声も一定数見られました。あとは、「国産品って言っても、部品に中国製が含まれているなら意味が薄いのでは」といった指摘も。これはまさに先ほどの「脱中国戦略」が注目される所以です。
ただ、記事を書いている側としては、こういう生の疑問こそが重要なヒントだなと感じます。ユーザーが知りたいのは、単なるニュースの羅列ではなく、「実用化したら、実際に運用する側にとってどうなのか」というリアルな部分なんですよね。
まとめ:ダンボールドローンは“安かろう悪かろう”じゃなかった
ダンボールドローンは、ただ材料を安くしただけの「手抜き製品」ではありません。価格を徹底的に下げるという目標を達成するために、あえて段ボールという素材を選んだ、戦略的かつ工学的に非常に優れた製品です。
- 価格は約30万円台から
- 海上自衛隊での実運用はすでにスタート済み
- シンガポール・エアショー2026では海外から注目を集めた
- 情報系部品の脱中国を徹底しつつ、電動系は柔軟な対応を取る
- 防衛テック特有の資金調達課題を抱えつつも着実に前進している
少し前までは「ドローンといえばDJI」という構図が当たり前でしたが、安全保障の観点からも国産ドローンへの注目が高まっている今、ダンボールドローンはその流れを象徴するような存在です。まだ一般の人がAmazonでポチッと買えるようなものではありませんが、その発想と技術は、これからの日本のものづくりのあり方に一石を投じるものだと感じています。
これからも「ただの段ボール」で終わらせない、このプロダクトの進化に注目していきたいですね。

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