「中国でドローンを飛ばしたいけど、2026年に入ってからルールが変わったって本当?」——この疑問にお答えします。結論から言うと、2026年5月と7月に二段階の大きな法改正が施行されており、従来の情報はほぼ通用しません。 特に2026年7月1日施行の改正民用航空法で「適航許可」が原則義務化され、2026年5月1日施行の強制国家標準で「先登記・後激活(有効化)」と飛行記録の120時間保存が義務づけられました。この記事では、日本語でまだほとんど紹介されていない最新の法改正の内容と、すでに発生している処罰事例をもとに、2026年8月時点の「今」のルールを徹底解説します。
なぜ今、中国ドローンの規制を「最新」で知る必要があるのか
中国のドローン規制はここ数年で劇的に変化しています。多くの日本語記事が参照しているのは2024年1月に施行された《无人驾驶航空器飞行管理暂行条例》(以下、暂行条例)までの情報ですが、2026年に入ってから法体系が大きく変わりました。
具体的には、2026年5月1日に2つの強制国家標準が施行され、さらに2026年7月1日には改正民用航空法が発効しています。この二つの動きをセットで理解していないと、現在の中国でドローンを飛行させることは事実上不可能です。この記事では、この「二段階の改正」を整理し、実際に何が変わったのか、何をしなければならないのかを解説します。
2026年5月1日施行:2つの強制国家標準で「登記」と「識別」が激変
まず最初に押さえるべきは、2026年5月1日に施行された2つの国家標準です。これは《民用無人駕駛航空器實名登記和激活要求》と《民用無人駕駛航空器系統運作識別規範》という名称で、国家安全部が発表したものです(中国网報道、2026年5月)。
実名登記+「激活」がセットに——未登録機は飛ばせない
これまでも実名登記は義務でしたが、新制度では「先登記・後激活(有効化)」という流れが強制されました。つまり、UOM(無人機実名登録システム)で実名登記をした上で、ドローン本体を「激活(アクティベート)」しなければ飛行できない仕組みです。この二段階を踏んでいないドローンは、そもそもモーターを回すことすらできないと理解しておいたほうがいいでしょう。
DJI Mavic 3 ProやDJI Mini 4 Proなど、多くの中国製ドローンはこの新制度に対応したファームウェアアップデートが順次提供されていますが、古い機体(例えば初代DJI Mavic 3やDJI Phantom 4シリーズの一部)は対応していない可能性もあります。中国国内で飛行させる前に、必ずメーカーの公式情報を確認してください。
飛行中は常に「識別情報」を送信——監視の目が徹底的に
もう一つの大きな変更は、飛行中に常に位置・速度・飛行状態などの識別情報をリアルタイムで監視機関に送信することが義務化された点です。これにより、「誰が・どこで・いつ・どのように飛ばしているか」が常時可視化される仕組みになりました。
120飛行時間分のデータ保存——手動削除は不可能
そして、ユーザーにとって最もインパクトが大きいのが最低120飛行時間分の運航識別情報をロール保存(手動削除不可) する義務です。つまり、過去120時間分の飛行ログが自動的に保存され、ユーザーが削除することはできません。このデータは違法行為の証拠として利用されることが明記されており(国家安全部発表)、プライバシー面での不安の声もSNSで複数確認されています(X、2026年8月確認)。
2026年7月1日施行:改正民用航空法で「適航許可」が原則義務化
さらに2ヶ月後の2026年7月1日には、改正民用航空法が施行されました(中国民用航空局発表、2025年12月)。これは法律(上位法)であり、これまでの行政法規(暂行条例)よりも効力が強い点が重要です。
「適航許可」とは何か——今までと何が違うのか
改正法の核心は、ドローンの設計・生産・輸入・修理・飛行のすべての段階で適航許可を原則として取得しなければならないという点です(中国全国人民代表大会発表、2025年12月)。適航許可とは、簡単に言えば「そのドローンが安全に飛行できる設計・製造基準を満たしている」という国の認定です。
これまでは、微型(0.25kg未満)・軽型(0.25kg〜4kg未満)・小型(4kg〜25kg未満)については適航許可が不要でした(暂行条例、2024年施行)。しかし改正法では「従事…飛行活動,應當…申請取得適航許可」とされ、原則としてすべてのドローンに適航許可が求められることになりました。ただし、法文には「按照規定無需取得適航許可的除外」という但し書きもあり、一部の例外が存在することは確かです。
問題は「例外」の範囲——現時点では未確認情報が多い
ここが現在の情報の最大の盲点です。改正民用航空法の本文には、どのような条件が「例外」に該当するのかが明記されていません。中国民用航空局の公式サイト(2026年8月確認)でも、施行細則や関連規定はまだ公開が確認できていません。
つまり、「2026年7月以降も微型・軽型・小型は従来通り適航許可が不要だ」と断言できる情報は、現時点では存在しません。一部の中国SNS(小紅書、2026年7月確認)では「微型は依然として不要」という趣旨の投稿も見られますが、公式発表に基づくものではありません。この点は非常に流動的であり、最新の公式情報を継続的に確認する必要があります。本記事では、この「確認できていない」という点を正直にお伝えすることが、読者の皆さんのリスク回避に繋がると考えています。
実際に起きている処罰事例——「遡及取締り」のリアル
法改正と同時に、実際の取締りも強化されています。ここでは2026年5月以降に報じられた事例を紹介します(中央廣播電臺報道、2026年5月)。
瀋陽のコンサート会場事件——行政拘留10日
2026年5月、遼寧省瀋陽市でコンサート会場の近くで許可なくドローンを飛行させた男性が、行政拘留10日の処分を受けました。中国のドローン規制違反で拘留処分が出た事例として注目されました。従来は罰金や操縦資格停止が主でしたが、改正法施行後はより厳しい行政処分が適用されるケースが増えています。
杭州の遡及調査事例——3月の飛行記録が5月に発覚
さらに衝撃的なのは、浙江省杭州市で2026年3月の飛行記録を5月に遡及調査され、警察への出頭を求められた事例です。新たに義務化された120時間分のロール保存データをもとに、過去の違反行為が掘り起こされています。つまり、「5月1日より前の飛行だから大丈夫」というわけではなく、システムに記録が残っていれば遡って処罰の対象になりうるということです。
移動時の落とし穴——進京列車で搭乗拒否
また、貴州省では進京列車(北京行きの列車)にドローンを持ち込もうとしたところ、搭乗を拒否された事例も報告されています。中国国内の鉄道や空港では、ドローンの機内持ち込みに関するルールも別途存在するため、飛行場所だけでなく移動時のルールにも注意が必要です。
ユーザーが直面する「今」の混乱と不安
2026年8月時点で、中国ドローンの規制をめぐってはSNSやQ&Aサイトで多くの混乱が見られます(X、Yahoo!知恵袋、小紅書、2026年7〜8月確認)。
特に多いのが「適航許可の対象範囲がわからない」という不安の声です。前述の通り、改正法の例外規定が不明瞭なため、「自分のドローン(例えばDJI Mini 4 Proのような軽量機)は大丈夫なのか」という疑問が多数寄せられています。
また、「120時間の飛行データ保存が誰にどう見られるのか」というプライバシー面での懸念も少なくありません。これは法文上も明確にされていない部分であり、今後の運用次第というのが実情です。
さらに、「日本人が中国でドローンを飛ばす場合の手続きがわからない」という声も複数確認されています。観光や出張で一時的に中国を訪れる場合の扱いについて、現時点では明確なガイドラインが公開されていません。中国民用航空局のUOMシステムは基本的に中国本土の身分証(身分証番号)での登録を前提としており、外国人の登録フローは日本語情報が非常に少ないのが現状です。
今後の見通し——「低空経済」專門立法の動き
最後に、中長期的な動向にも触れておきます。中国では「低空経済」(低空域での商業活動全般)を促進する法的枠組みの整備が進んでおり、2026年3月には上海航天信息科技研究院の伍愛群院長や中国人民大学の馬懐徳学長らが、低空経済の專門立法の必要性を公に発言しています(法治网報道、2026年3月)。
《无人驾驶航空器飞行管理暂行条例》はドローンに特化した初の専用行政法規ですが、専門家の間では「さらなる上位法(法律)の整備が必要」という意見が強いのが現状です。2026年7月の改正民用航空法はその流れの一部であり、今後も規制は段階的に強化されていくものと見られます。
まとめ:2026年8月時点で中国ドローンを飛ばすためにすべきこと
ここまで見てきたように、2026年5月と7月の二段階の法改正で、中国のドローン規制は大きく変わりました。特に重要なポイントを改めて整理します。
【2026年5月1日から】
- 実名登記+激活(有効化)の二段階が強制化
- 飛行中のリアルタイム識別情報送信が全機種で義務化
- 120飛行時間分のロール保存(手動削除不可)がスタート
【2026年7月1日から】
- 改正民用航空法により「適航許可」が原則義務化
- 微型・軽型・小型の「例外扱い」は現時点で未確認(従来通りとは断言できない)
【実際の取締り】
- 行政拘留などの重い処分が適用されるケースが発生
- 5月1日より前の飛行記録も遡及調査の対象になる
これらの情報を踏まえると、現時点で中国でドローンを飛行させるためには、少なくとも以下のステップを踏む必要があります。
- UOMシステムで実名登記を完了させる(外国人の登録フローは別途要確認)
- ドローンの激活(有効化)を実行する(DJI Mavic 3 ProやDJI Air 3など新型機種は対応済み)
- 120時間分の飛行ログが自動保存されることを前提に飛行計画を立てる
- 適航許可の例外規定に関する公式発表を継続的にチェックする(中国民用航空局の公式サイトを直接確認)
中国のドローン規制は「変わった」のではなく「変わり続けている」というのが正確な表現でしょう。特に適航許可の例外規定や外国人向けの手続きについては、明確な情報がまだ公開されていません。最新情報は必ず中国民用航空局(CAAC)の公式サイトや国家安全部の発表を一次ソースとして確認することをお勧めします。この記事が、変化の激しい中国ドローン規制を読み解く一助となれば幸いです。

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