DJIがFPVドローンの世界に本格的に参入してからもう数年が経ちますが、いまだに「DJI FPV」と「DJI Avata」の違いって何?とか、自作機にDJIのシステムを載せられるの?といった疑問を持っている方も多いんじゃないでしょうか。この記事では、カタログスペックだけじゃわからない運用上のリアルな注意点から、日本国内で実際に飛ばすときに気になる電波規制の影響、さらにベータフライトとの連携ノウハウまで、実際の公式データをもとにまとめていきます。結論から言うと、DJIのFPVシステムは「最高画質で飛べる完成機」と「自分でカスタムするDIY機」の2つの大きな流れがあり、それぞれまったく別の製品として考える必要があります。特にAvataには本体に20GBもの内蔵ストレージが搭載されている(DJI公式サポート、2022年8月公表)一方で、旧来のDJI FPVシステムのエアユニットは発熱にかなりシビアという違いがあります。このあたりの「買ってから気づく落とし穴」を最初に押さえておくかどうかで、満足度が全然変わってくるはずです。
DJI FPVドローンの基本的な製品ラインアップと位置づけ
まず最初に押さえておきたいのが、現在DJIが販売しているFPV関連製品は大きく分けて「DJI FPVシステム(エアユニット方式)」と「DJI Avata」の2系統があるということです。「DJI FPVドローン」とひとくくりにされがちですが、実はこれらは設計思想がまったく違います。
DJI FPVシステムは、2018年10月に発表されたデジタル映像伝送システムがベースになっています(DJI公式サポート、2018年10月23日公表)。これはエアユニット(送信機)、カメラ、ゴーグル、リモコンがセットになったもので、ユーザーが自作したフライトコントローラーと組み合わせて使うことを前提としています。つまり「自分で機体を組む人向け」の製品です。
一方でDJI Avataは、2022年8月に登場した完成機タイプのFPVドローンです(DJI公式サポート、2022年8月24日公表)。こちらはバッテリーを入れてスイッチを入れればすぐに飛ばせる、いわゆる「買ってすぐ飛ばせるFPV」です。プロペラがダクテッドファン(覆い付き)になっているのも大きな特徴で、初心者がぶつけても壊れにくい設計になっています。
この時点で、自分が「組み立てるのが好きなタイプ」なのか「すぐに空撮を楽しみたいタイプ」なのかがはっきりすれば、選ぶべき製品は自然と絞られてくるというわけです。
DJI FPVシステムの核心スペックと「カタログに書いていない制約」
さて、ここからはDJI FPVシステムの具体的なスペックを見ていきましょう。エアユニットの電源仕様は7.4Vから17.6Vまで対応し、消費電力は約4Wから9Wとされています(DJI公式サポート、2018年10月23日公表)。この辺りは自作機ユーザーにとってはとても重要な情報で、バッテリー選びの際に頭に入れておく必要があります。
そして何よりもFPVの要となるのが映像伝送の遅延です。DJI FPVシステムの低遅延モード(720p/120fps)では、エンドツーエンドの遅延が28ms未満と公表されています。ただし、これは「広いエリアで電磁干渉がない場合」という条件付きの数値です(DJI公式サポート、2018年10月23日公表)。つまり、都市部や電波の多い場所ではこの数値が出ないこともあるよ、というのが公式の見解です。
ここでちょっと気になるのが、リモコンの制御遅延について。なんとHDLプロトコルを使えば最低7msまで低下するという情報が公式FAQに載っています(DJI公式サポート、2018年10月23日公表)。ただし、これにはフライトコントローラーのファームウェア更新が別途必要だという但し書き付きです。ここがけっこう盲点で、「買ったままの状態では最高のパフォーマンスが出せない」可能性があるということを知っておいてください。
動作温度と発熱問題のリアル
FPVシステムを自作機に載せる場合、絶対に無視できないのが発熱問題です。DJI公式サポートによると、エアユニットの動作温度は0℃から40℃まで。そして特に注意が必要なのが「ホバリングや地上テストでの長時間運用はLow Powerモードに移行しパフォーマンスが低下する恐れがある」という点です(DJI公式サポート、2018年10月23日公表)。
これはどういうことかというと、飛行中は風が当たって放熱されるので問題になりにくいんですが、地上で設定をいじりながら長時間電源を入れっぱなしにしていると、エアユニットが熱を持ってしまって出力が落ちるんですよね。FPVの自作機ユーザーあるあるなんですが、地面でゴニョゴニョやってるうちに「あれ?映像が途切れやすくなったな」ってなるのは、この熱ダレが原因かもしれません。
ちなみにDJI FPVの完成機タイプ(ドローン機体の方)は-10℃から40℃まで対応しています。エアユニットより下限が低いのは、モーターの風で常に冷却されるからでしょうね。
DJI Avataが持つ「地味にすごい」独自機能
ここで少し視点を変えて、DJI Avataの特徴を見てみましょう。Avataは完成機タイプなので、エアユニットのように熱問題に神経質にならなくて済むのが大きいです。そして何より「本体に20GBの内蔵ストレージがある」というのが大きな強みです(DJI公式サポート、2022年8月24日公表)。microSDカードを忘れても、とりあえず飛ばして記録が残せるわけですから、これは実際に使ってみると便利さに驚きます。
また、Avataに付属するゴーグルやリモコンも含めたトータルでの使い勝手の良さが評価されています。特に初心者の方が「FPVって難しいんでしょ?」という不安を感じる場合、Avataの「ぶつかりにくいプロペラガード」と「緊急停止機能」はかなり心強い味方になります。
日本国内でDJI FPVドローンを飛ばすときの電波規制の問題
ここからは日本国内ユーザーにとって非常に重要な話をします。DJI公式サイトのスペック表を見ると、最大伝送距離が10km(FCC)と書いてありますよね。でもこれ、日本の電波法(SRRC規格)では出力制限がかかるんです。
DJI公式サポートによると、各国の電波法準拠時の最大伝送距離は以下の通りです(DJI公式サポート、2018年10月23日公表)。
- FCC(米国):10km
- CE(欧州):6km
- SRRC(中国):6km
- MIC(日本):6km
つまり日本では最大6kmまでしか飛ばせない、ということです。もちろん6kmという距離も十分長いんですが、「カタログに10kmって書いてあるから日本でも飛ばせるでしょ」と思って買うと、思ったより飛距離が出ないと感じるかもしれません。これは規制上の話なのでどうしようもないんですが、事前に知っておくのと知らないのとでは心構えが違いますよね。
ベータフライトとの連携で変わるDJI FPVシステムの真価
さて、ここからが自作機ユーザーにとっては本題でしょう。DJI FPVシステムはベータフライト(BetaFlight)をはじめとする主要なフライトコントローラーと互換性があります。つまり、自分が今使っているベータフライト機にDJIのデジタル映像伝送システムを載せられるんです。
ただし、ここでも注意点があります。先ほども触れたHDLプロトコルによる7msの低遅延を実現するには、フライトコントローラーのファームウェアアップデートと、UART設定の変更が必要です。具体的なセットアップ方法は機体によっても異なりますが、大まかには「UARTポートの割り当て」と「プロトコル選択」の2つがポイントになってきます。
DJIエアユニットとフライトコントローラーを接続する際は、TX/RXのクロス配線を間違えないようにしてください。ベータフライトの設定画面で「Serial RX」を有効にして、受信機プロトコルを「CRSF」または「SBUS」に設定するのが基本的な流れです。この辺りのノウハウは、実はネット上にまとまった日本語情報が少ないので、ここで押さえておきましょう。
DJI FPVゴーグルの注意点:視度調整とレンズ保護
DJIのFPVゴーグル、画質が良いのはもちろんですが、いくつか事前に知っておくべき特徴があります。まず、ゴーグル本体には視度調整機能がありません。つまり、メガネをかけている人は別売りの度付きレンズを購入する必要があります。公式サイトでは+2.0Dや+4.0Dなどの度付きレンズが用意されています(DJI公式サポート、2022年8月24日公表)。
そしてもう一つ、これはかなり大事なんですが、ゴーグルのレンズを直射日光に当ててはいけません。当たり前といえば当たり前なんですが、FPVゴーグルは液晶画面を拡大して見る構造なので、レンズに日光が当たると画面が焼け付く恐れがあります。FPVに詳しい人なら常識かもしれませんが、初めての人は「外でゴーグル外してテーブルに置きっぱなし」とかやりがちなので、ここはくれぐれも注意してください。
DJI FPVドローン用リモコン、2種類の違いを検証
実はDJIのFPV対応リモコンには大きく2種類あります。一つはDJI FPVシステムに付属する大型のリモコン(型番はFC7BGCと見られます)、もう一つはDJI Avataなどに付属する小型の「DJI FPV リモコン 2」です。
この2つ、見た目が全然違うんですが、機能面でも違いがあります。DJI公式の各国サポートページを比較してみると、旧型の大型リモコンは重量が約765g(香港ページの記載)なのに対し、新型のDJI FPV リモコン 2は約346g(シンガポールページの記載)と半分以下の軽さです(DJI公式サポート、各ページ)。また、新型リモコンにはUSB-Cポートと3.5mmオーディオジャックが搭載されており、シミュレーターに接続して練習することもできます。
この違い、結構大きいですよね。特にシミュレーターで練習したい初心者にとっては、新型リモコンの方が圧倒的に便利です。ただ、あくまで「FPVシステム付属のリモコン」と「Avata付属のリモコン」は別物なので、どちらを買うかは自分が使う機体に合わせて選ぶ必要があります。
DJI FPVシステム vs DJI Avata 選択チャート
ここまでの内容を踏まえて、自分にはどちらが合っているのかを簡単に整理してみましょう。
- DJI FPVシステム(エアユニット)が向いている人
- すでにベータフライト機を持っている、または組む予定がある
- フライトコントローラーの設定を自分でいじるのが好き
- 画質と低遅延を最優先したい(ただし熱管理は自分でやる必要あり)
- リモコンはシミュレーター接続よりも、手持ちのプロポを使いたい
- DJI Avataが向いている人
- FPVドローンを買ったらすぐに飛ばしたい
- プロペラガード付きで安全に飛ばしたい
- microSDカードを忘れがち(内蔵20GBストレージあり)
- 屋外で手軽に動画を撮りたい
- リモコンでシミュレーター練習もしたい
この2つ、実は「どっちが上」という話ではなくて、まったく別のニーズに応える製品なんですね。だからこそ「DJI FPVドローン」というひとつのキーワードで検索すると両方の情報が混ざってしまって、かえって混乱するわけです。
推奨SDカードと周辺アクセサリ選びのポイント
最後に、周辺機器の選び方についても触れておきましょう。DJI FPVシステムもAvataも、SDカードはU3/V30以上の高速カードが推奨されています。DJI公式サポートによると、AvataではSamsung PRO PlusやKingston Canvas React Plusといった特定のブランドが推奨リストに挙げられています(DJI公式サポート、2022年8月24日公表)。
SanDiskのExtreme PROシリーズなども多くのユーザーが使っていて、おそらく問題なく動作すると思いますが、公式に推奨されているカードを選んでおけば間違いないでしょう。4K動画を書き込むのですから、速度が足りないと「書き込みエラー」や「録画停止」という悲しい事態になりますからね。
DJI FPVドローンの運用で絶対に外せない3つのポイント
ここまでの情報を総合すると、DJI FPVドローンを快適に運用するために絶対に外せないポイントは以下の3つです。
1つ目は「発熱管理」。特にエアユニットを使う自作機ユーザーは、地上での長時間電源投入を避けること。ホバリングや地上テストは短時間で切り上げるのが鉄則です。
2つ目は「電波規制の理解」。日本国内ではSRRC規格で6kmまでという制限があることを受け入れ、その上で飛行計画を立てること。10km飛ばせると期待してガッカリしないようにしましょう。
3つ目は「ゴーグルレンズの保護」。直射日光には絶対に当てないこと。FPVゴーグルは高価な買い物ですから、ちょっとした注意で長く使えるようにしたいですね。
DJIのFPVシステムは、デジタル映像伝送の品質と低遅延を両立させた、現時点で非常に完成度の高い製品群です。そして何より、ベータフライトとの連携によって自作機の世界にも新しい可能性を広げてくれました。「完成機で手軽に始める」もよし、「自分で組んだ機体に載せる」もよし。自分のスタイルに合わせて選べるのが、このエコシステムの最大の魅力なんじゃないかと思います。
スペック表だけを見るのではなく、運用上の注意点や規制の違いまで含めて理解した上で、自分にぴったりの一台を見つけてください。FPVの世界が、きっともっと楽しくなるはずです。

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